例えば俺が本当の人間だったならこんな不毛なおもいをしなくて済んだのかな、彼は薄れ消えゆく指先を見つめながらとうとうと語る。その目はきっと私の心の底までえぐる重さを持っている。もう一人の私は何も言わない。
 そんな二人を、正気の私は、遠くもなく近くもない離れた場所から見守る。そんな夢だった。
 言ってしまおうか。何も言わない私の代わりに。
 私はただ魚のように、口を開けてはつぐみ、開けては、つぐむ。
 何も起こらないままに時間は過ぎてゆく。早く逃げ出したいけれど、私は何も言うべき言葉を持たない。そんな夢だった。









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*反転
や 病んでる雰囲気
20100104