<<人外vs恐妻、ただし審判は旦那>>みたいなっ!





 ぬめりけを伴って腕に絡んだそれは、人肌よりずっと熱かった。触手と形容して遜色ないそれは、体液と思しき粘液を吐き出しながら対象――つまりは俺を捕らえた。うわ、気持ち悪い。粘液のしたたる上着を目にしながらも、足掻くほど深く絡みついてくる気持ち悪いものに抵抗らしい抵抗ができない。そいつらがくっつている上着を斬らずに、その弾力のある肉を断ち斬るにはどうしたらいいだろう。
「炸裂する力よ――」
 後ろから呟く声があった。エナジーブラスト。刹那を置いて、絡んでいたものが爆ぜる。肉塊が飛び散っていろいろなところに付着した。視界の端でぶつ切れになったそれが断末魔のようにうねうねと跳ね回っている。気持ち悪い。人外のもの特有の悪寒に、情けないことだが、口内へ胃液が逆流しかけてしまっていた。
 ジェイドはというと、まだ足にへばり付いたままのそれを無理矢理に引き剥がしている(触手の表面が裂けて嫌な断面を覗かせていたけれど、本人は全く気にしていないご様子だ)。地に放ったものへ嫌悪感を露にしたジェイドは空に掲げた手に槍を構え、何をするのかと訊く間もなく振り下ろした。
 ぐちゃ。
 空気を裂く短い音の後に、嫌な音がした。
 矛先は弾力のある肉を容易く貫通し、地面に串刺しにされた触手だけが残る。嫌な臭い。それでもしぶとく、びちびちと跳ね回るヤツにさらなる不快感を覚えたのだろうか。刺したり裂いたり潰したりと散々いたぶって、最後には引き千切って無造作に捨てた。残骸は譜術で吹き飛んだそれよりもずっと生々しい。
 …………。
 声も出ないとはこのことを云うのだろうか。
「……まぁ、頑張った方でしょう」
 何に対する労いなんだ、と突っ込む気も起きない。
 まさか中年軍人相手に女性じみた言動を期待するわけではないけれど……ないけれど。
 あんまりだと、思った。
 ぱんぱんとグローブに付着した触手の粘液をはたくジェイドに、俺は黙っていた。惨状を意識の端から追いやろう思考を巡らせる。ただただ突っ立っている俺はとても不自然だと思うから、その言い訳でも考えていよう。情けないのは重々承知の上で。
 あたりにはなんとも言い難い腐臭が漂っていた。
 












*****
*反転
タイトル元ネタ、巫女子ちゃん@クビシメロマンチスト「《ラジオ体操第二、ただし時間がないのでヒゲダンス》みたいなっ!」みたいなっ。
うちのジェイドは触手ごときにどうこうされるタマではないと、私が勝手に思い込んでいます。でも触手ネタはだいすきです。矛盾. ちょっと、というかかなり、不思議ちゃんになりました(私も)。新境地

新境地ついでに、あけましておめd(ry
今年もレンズを宜しくお願いします。
2006.12.31