トウコさんがペニバンをつけてノボリさんを一発掘る話です。ご注意ください。
ノボリさんが当社比ノリノリなので重ねてご注意ください。
それでもよろしけれどうぞ。













ノボリさんを一発掘りたかったはなし






 スーパーシングルトレイン49両目。そこへ足を踏み入れたのは、ノボリも期待を寄せている少女であった。彼女は何度もこの車両へ至っては、ノボリに敗退していた。今日こそはノボリを打ち負かしてくれるだろうか、と、ノボリは期待に胸を躍らせていた。
「貴方様にはもう前口上など野暮でしょうか」
「あの、バトルの前にひとつだけ。ノボリさん、私ね。貴方に勝ったらひとつ、お願いがあるんです」
 彼女の瞳には闘志がめらめらと燃えていた。その意気やよし。今日の彼女ならばあるいはきっと、ノボリを倒し新たな終着駅を見出してくれるかもしれない。ノボリは心躍らせた。
「トウコ様。まずは勝利なされてから、お伺いいたしましょう」
「ええ、お願いします!」
 勝敗は即座に決した。
 トウコのガブリアスの逆鱗がノボリのオノノクスを一撃で葬った。蹂躙という名に相応しい、一方的な勝負であった。ノボリは目を疑う。当初ダブルの攻略に心を砕いていたトウコは、いつの間にやらシングルにばかり乗車するようになっていた。ノーマルシングルを突破した時点でかなり見込みのある少女であったけれど、まさかここまで急成長するとは思いもよらなかった。彼女の目には未だかつて見たことのない闘志に燃えていたのだが、普段は明るく温厚な性格である彼女をしてそこまで勝負へ駆り立てたのは、先刻の「お願い」というやつであろう。一体どのような願いだというのか。スーパーシングル49両目を突破したことの、その見返りに彼女は何を求めるのだろうか。勝利の雄叫びを上げてガブリアスと喜び合う少女を、ノボリは口上も忘れてキッと見つめた。
「ノボリさん。私、勝ちました……! ね、お願い叶えてくれますよね」
「男に二言はございません。ひとつ、お伺いいたしましょう」
 トウコはまだ主人とじゃれたがっている様子のガブリアスをボールに戻し、そうしてノボリへ手招きをした。ノボリは微笑ましい気持ちになりながら腰を折り、トウコの口元へ耳を寄せた。レコーダーに声を拾われないよう、少女は声を潜め、意を決したように、呟いた。


「一発掘らせてくれませんか」


「…………はい?」
 思春期の若い女性の口から、何やらおぞましい単語が聞こえた気がするのだが。



 どういう経緯で用意されていたのか全くわからないが、トレインを下車したところで俯いた鉄道員に仮眠室へと案内された。お前らグルか。女性のお客様にはより一層丁寧な対応が求められるものだが、ここまで丁寧に逐一要望を叶えろと言った覚えはない。ノボリの睨みつける攻撃も、鉄道員の制帽の鍔で敢え無く弾かれる。仮眠室の重い鉄製のドアが上げる悲鳴を、ノボリは死刑宣告のように聞いていた。
 男に二言はないんですよね、とトウコは薄いノボリの身体を仮眠室の薄いベッドに押し倒して言った。
 で、目が覚めたらノボリの身体の自由が奪われていたのだ。不自然に飛んだ意識はきっと催眠術とかそういうものだと思う。人に向けて打ってはいけないのは破壊光線だけじゃねえとノボリは思う。思うけれどもきちんとした言葉になりそうもないので口を噤む。後頭部から口へ回されたタオルのせいだ。
「ノボリさんならいけるってクダリさんが教えてくれたんですよ」
 あの弟一体何をいたいけな少女に吹き込んでくれたのだろう。男を掘りたいとかいう結論に行きついたこの少女も相当だが。
「私思ったんですよ。ノボリさんを目指して戦ってる間、どうして勝てないんだろう会えないんだろうって。考えてたらすっごくイライラしちゃって、あんまりにもイライラしたんでパーティを組み直したりタマゴを孵化したりいろいろしたんですけど、それでもイライラが治まんなくって。それでどうしたらイライラが収まるかなーって思ったら、そう、ノボリさんを全力で叩きのめせばいいんだって結論に至ったんですよ」
 叩きのめすのはバトルだけにしてくださいませんか。ノボリは思った。しかし、口に噛まされたガーゼタオルに音が吸い込まれ全く意味のないものとなってしまう。
「いいザマですね!あのノボリさんがこんな無防備な姿で私に腹を晒しているだなんて!」
 トウコは似つかわしくない台詞を言ってのけ、そうして幼いころに見たヒーローものの悪役顔負けの高笑いをした。ノボリは、初めてノーマルシングルにやってきたあの頃のトウコを思い出していた。あの、太陽のように朗らかで、礼儀正しかった彼女は一体何処へ行ってしまったのだろう。
「どうやってノボリさんを掘ろうとしてるのか、気になります? なりますよね? 掘るものがないだろうって!! 残念でした!! 私にだって掘削手段はあるんですよ!!」
 彼女は後ろ手に何かを漁った。一体何処を漁っているのだろう。
 彼女の手には、黒光りする棒、そこから生える黒光りしたベルト、そして金具。実物としては初めて見る代物だった。男たるノボリには必要のないもの。男の象徴たるそれの張りぼて。
 目にしたノボリは自らの頭部で一纏めにされている両の手首をこれでもかと暴れさせた。ただのガムテープであるはずなのに、ガーゼの上から厳重に幾重にも巻きつけられ束になっているせいか簡単に破れそうもなかった。
 トウコは丈の短いホットパンツの上からそれを装着する。一切着衣を乱していない彼女が、ぎらぎらと目を光らせてノボリのネクタイを取り去った。
「ねえ見てください。立派でしょう? ね? でも大丈夫ですよ痛くしませんから!!」
 息が荒い息が荒い息が荒い。少女の細い指がノボリのベルトを解いていく。下手に抵抗しては彼女に怪我をさせてしまうかもしれない。
 しかしこれから先に進まれてもだめだ。
「暴れないんですか?」
 ノボリは首を横に振った。そうしてガムテープでぐるぐるに巻かれた両手首を差し出し、曇った声で「これを」と言った。トウコは逡巡したけれども思いのほか従順なノボリの姿を見遣り、そうして手をかけたのはノボリの口に噛ませたタオルであった。
「ちょっ……と、大人しくしてください」
 ノボリは予想外の行動に出たトウコに驚き、タオルを奪われないよう首を振った。しかしそれでは彼女をむきにさせるばかりだ。抵抗空しくノボリの口から唾液を吸い重くなったタオルが離れていった。
「んっ!? トウコ様、これではなくっ……」
「だってこれから暴れられたら私敵わないですから……それに」
 トウコはノボリの腹を跨ぎ、そしてまだ荒く上下するノボリの胸板をシャツ越しに撫であげて、そして首の筋を辿って、緩い曲線を描いている顎を捕まえた。
「ノボリさんのそういう声聞こえないなんて勿体ないと思ったんで!!」
 あまりにもいい笑顔だった。ノボリはこのまま意識を飛ばしてしまいたいと思った。できることならばずっと口は塞いだままであって欲しかった。むしろこの少々行き過ぎた悪戯をしたいがだけの少女にある種のトラウマを植え付けてしまわないか、襲われている身でありながらも心配になる。
「トウコ様、貴方……お幾つですか……発想がえげつないにも程があります……」
「それに答えちゃうとノボリさんのがジュンサーさんのお世話になりますけど大丈夫ですか?」
「…………」
 その答えだけでノボリを黙らせるには十分だった。どうしてこう自分の回りには少々ぶっ飛んだ人間しか居ないのだろうか。
 ……いや。もしかすると。このバトルサブウェイという施設が未来ある少女の健全な精神をこうして蝕んでしまったのだろうか。ならばその施設の長として一切の責任がないともいえない。ならばこうして少女の気が済むまで大人しくしていればいいのではないだろうか。
 つまるところ、ノボリは色々と考えるのをやめた。自分が辱めを受けるだけでこの場が収まるのならば。もういい。自らの恥ずかしさは二の次である。
「覚悟してくださいね」
 トウコの爛々と輝くその目を、ノボリは決して直視することはできなかった。


**


「あっあっあぁっ駄目っ」
 仮眠室には耳を塞ぎたくなるほどの甘ったるい声が響き渡っていた。その出所は今少女に組み敷かれているいい年した成人男性の悩ましく反らされた喉であった。
 脱げかけのスラックスを鬱陶しく思いながら、トウコは小さな身体を懸命に揺らしノボリを甚振る。腰の下へ申し訳程度に枕を入れて少し高くしているけれど、こんなにもあっさりとトウコが挿入に至ったのはノボリの協力あってのことだった。
「抜かな、いで、下さいましィっ」
 抜かれるときが、一番我慢ならない波が来てしまうのだ。喉を晒しあられもなく喘いでいたノボリは、薄い眉を悩ましく寄せトウコに懇願した。
「はぁっあァ……っ!」
 けれどもトウコはノボリを凝視したまま無慈悲に腰を引いた。そうして最後まで抜き去ると、トウコは疑いの目を以ってノボリに問うた。
「……ほんとにノボリさんですか?」
 こんなに簡単に甘い声を上げ善がられるとは、トウコは思いもよらなかったのだ。
「トウコ様ァ……」
 ノボリは頬を上気させたまま高く震える声でトウコを呼んだ。抜けていった黒くてらてらと光るシリコンのものへ、ぐいと腰を押し付ける。ノボリの奥はまだ物足りないとでも言う風に次の一突きを待っていた。
「ノボリさん?」
 トウコを置き去りに一人盛り上がっているノボリに、トウコは困惑を浮かべながら再び声を掛ける。
「焦らさない、で…………………………はっ」
 何もせずずっと固まっているトウコに、ノボリはようやく我にかえる。
「トウコ様大変申し訳ございませんっわたくしとしたことがいい大人が不健全なことを口走ってしまってっ戸惑わせてしまいましたでしょうほんとうに申し訳えっあ、あぁん!」
 立て板に水。自らの性器と肛門を晒しながら淀みなく謝罪の言葉をべらべらと喋り始めたノボリに、トウコは有無を言わさず大きく傘の張ったそれを突き立てた。
「トウコさ、まぁ、だめ、あっ、それだめですからっ」
 ノボリは気が気ではなかった。きっと自分の半分ほども年端もいかないであろう彼女へ、こんなに醜い肉欲に抱かれた自身の声を聴かせてしまうだなんて。あのとき口に噛まされたタオルを外されてしまったとき、もっと抵抗すればよかったのだ。犯されることに慣れた身体はどうしたって反応してしまう。反応すればするほど声は零れてしまう。
「やぁっあぅ、んァッ、あっ……いいっ……」
 ノボリは恥じることなく感じ入っていた。膝のあたりで留まっている、いや留めているスラックスでどうにか視界に入れないようにしていたのだが、無視するのにも限界があった。ノボリの全く触れられていないものは既に涎を垂らし打ち震えている。
 トウコはノボリの膝裏へ手を差し入れ、必死に白い身体を揺すった。自分が腰を突き入れるたびに、ノボリの口から甘く善がる声が上がる。男のくせに、それもいい年をした大人のくせに、自分のような女に簡単に尻を犯されて気持ちいいだなんて。こんな変態だと知って、トウコはノボリをどう思うだろうか。軽蔑するだろうか。
「はぁっ……!」
 考えただけで頭が真っ白になってしまいそうだ。熱い息がノボリのだらしなく開いた口から零れる。
 トウコはノボリの勃ち上がったものを一瞥して目を逸らす。触れていないのにどうしてこんなに大きくなっているのだろう。トウコは気を逸らすべく一心に腰を振った。
「やっ、トウコさ、まっ、激しっ……あっ、おく、もっと……!」
 ノボリは考えるのを止めた。もう考えているだけの余裕がなかった。彼女にこの痴態を知られてしまった以上はもうどうしたってしょうがないのだ。ならば彼女の気が済むまで、この倒錯した行為を楽しめばいい。後のことは後で考えよう。
「そこっ、あん、いいです、トウコさま、トウコさまっ……わたくし、もう、んんっ」
 トウコは考えていた、どうしてこの人はこんなにも艶やかなのだろう。どうして男なのに尻を掘られてこんなに善がっているのだろう。どうして。どうして。どうして!? がむしゃらにノボリの中を突き上げ擦り上げていく。バンド越しにもノボリの中が悦んで異物を受け入れているということが分かった。どんなにひどくしたってきっとこの人は声を上げて歓喜に震えてしまうのだろう。トウコはもうどうにでもなれ、と、抜けるぎりぎりまで引き抜いたそれを、ぐん、と一息に奥まで突き入れた。
「あっ、も、ぁぁああっ――!」
 長いそれが奥の奥まで辿りついたのを、ノボリは快楽の大きさで知った。目をぎゅっと瞑り、一際高い声を上げた。脚の指先までもがぴん、と伸び、腰が浮く。ノボリは自分の腹に白濁をぶち撒け、達した。
「トウコさま、の、すっごく激しかったです……………………はっ」
 一発終えた後のピロートーク、かと思いきや、賢者タイムは余韻に震えるノボリの後頭部を真っ先に叩きにやってきた。サッと青褪めたノボリはノボリが達してから微動だにしないトウコへ謝罪の言葉を並べ立てる。
「トウコ様まことに申し訳ございませんなんとお詫びをしたらいいか! 女性の前でなんという醜態をさらしてしまったのでしょうかこのことはどうか御内密にお願いいたしますでないとわたくしお天道様の下を歩けませんどうかお願いいたしますトウコさはぅん!」
 トウコは無言で腰を引き、それに合わせてシリコンの塊がノボリの中から抜けていく。突き入れるときの勢いが嘘のようにゆっくりと。それはトウコなりの配慮であったが、ノボリにとっては嬲られるに等しい行為であった。
「あっ、はぁっ……トウコ様、ぁん、抜くの、いいです……………………ではなくてですね!!」
 ノボリの身体は簡単にスイッチが入ってしまう。そんな自分の身体が今は恨めしかった。トウコが完全に抜き終わると、ノボリは急いで腕を振り下ろした勢いで上半身をどうにか引き起こした。トウコは突然起き上がったノボリから飛び退き、心底肝を冷やす。貴方簡単に起き上がれたんじゃないですか。
「あの、トウコ様? ……………………………………………………」
「………………………………………………ごめんなさいっ」
 互いに沈黙を貫き通していた中、トウコはとうとう耐えきれず仮眠室を飛び出した。あの子ちゃんとバンドを外して行きましたでしょうか。ノボリはそればかりが心配であった。


**


「入るよ」
 コンコン、とトウコが開け放っていたドアを律儀に叩いて入ってきたのは、トウコを唆した張本人たるクダリであった。
「開いておりますが」
「ね、どうだった? どうだった?」
 ノボリは楽しげなクダリの目の前に、テープで拘束された手首を差し出す。クダリはコートからハサミを取り出すと、一思いにざっくりとガムテープの層を切り取った。
「恐らくトレインの常連客が一人減ったと思います」
 ノボリは自由になった手をぱたぱたと振ってみる。特に痛みはない。痕にもなっていない。
「そこまで? トウコそんなにひどい顔はしてなかったけど」
 クダリはペニスバンドを片手にけらけらと笑う。きっと彼女から回収したのだろう。他人に見られでもすれば即逮捕モノの映像だっただろう。ついでにその怪しげなシリコン製の男性器を調べられノボリが特定され兄弟もろとも二度とお天道様の元を歩けなくなっていたかもしれない。そもそも地下に籠りきりの二人であったが、社会的に死んでしまうことは二人の職務上どうしても避けねばならなかった。
「トウコ様に会ったのでしたら、アフターケア、お願いしますよ」
「大丈夫大丈夫。でさ、ノボリ、すっごい喘いでたね? 興奮した?」
 ノボリは一先ず腹に留まっている自らの体液をティッシュで拭い去る。クダリの問いかけに、その手を止めて深くため息をついた。
「…………聞こえてましたか」
「もちろん。ノボリすぐメロメロになっちゃって声の調節効かなくなるんだもんね。カズマサ顔真っ赤にしてた」
 トウコは戸惑っていたが、ノボリの身体は抱かれることに慣れ切っている。本来性器ではないそこを拓かれるのが、ひどく身体に馴染んでしまっていた。それもこれもノボリの身の内に眠る淫らな才を目敏く見出しクダリが年月をかけて拓いていった所為なのだけども。普段厳格に振る舞っているノボリは、しかしそういう場面になるとあっさりと性戯を楽しむ淫らな男へその身をやつす。ノボリの声は元々よく通る。ギアステーションでバトルに従事しているものの大半は、ノボリのその艶やかな声を意に反して聞かされた経験があるほどだった。今日もまた一人その犠牲者が出たわけだが。仮眠室の壁を厚くしてはくれないだろうか。それもひとえにノボリが仮眠室でそんな行為に及ぶ所為だけれども。
「ああ……明日カズマサにどんな顔をして会えばいいでしょうか……」
「もう諦めなよノボリ。今更だから、ね」
 クダリはトウコから回収したバンドを、ぽい、とベッドへ投げ捨てた。そして脱げかけのスラックスへ手をかけた。
「じゃ、次は僕の番ね。足りないでしょ、ノボリ」
「……やはり、熱を感じられないセックスは、だめですね」
「その割には結構喘いでたけどね。トウコ、そんなによかった?」
「嫉妬してくださるのですか。……なんだか初めてしたときの貴方を思い出してしまってですね、えっと……」
 ノボリは恥らって目を伏せたけれど、その目の端には期待の炎が灯っていた。
「……それならいいよ、うん。僕声聞きながらすっごく我慢してた。これからトウコに負けないすっごいバトル、始める」
「はい、来てくださいまし、クダリっ……あぁっ!」
 クダリはスラックスの前を寛げると、自分の緩く芯を持ったものを取り出し、ノボリを再びベッドへ押し倒す片手間に簡単に扱いた。そうしてすぐ硬くなったそれを、ノボリの後孔へ押し付ける。あとはもう慣れたものだった。
 二人は気が付かなかった。クダリが仮眠室に入ってきたそのとき、バンドを持ったまま後ろ手にドアを閉めたせいで、しっかりと扉が閉まっていなかったということに。そうして、壁が薄く建て付けの悪い仮眠室の扉は、きちんと締めなければ勝手に開いてしまうということに。
 二人の睦み合う声が、ギアステーションの廊下に虚しく木霊していた。








**
ごめんなさい

20140518